推力とプロペラ その2

このコーナーで以前プロペラの話をしたがその時はあまりクラブや仲間の間では話題にもならなかった。ところがかなり時間が過ぎた最近になってから何故か飛行場で同じクラブのN瀬さん達と話題になったり、メールでご意見をいただいたりしたのでもう一度、同じ内容にはなるが今回はもう少し具体的に実機のプロペラ理論のなどのさわりを少々また書いてみたいと思う。

事の起こりは最近その勢いがとどまる所を見せない電動機でばろの群長も最近はGWSの350クラスのギヤダウンから始まり400クラスのアウターローターのEPP、さらにはフルサイズのスタント機まで手をだしてすっかり電動機モードになりつつある。ところが電動機を扱っているサイトではさかんに静止推力が測定されている。更には推重比なる静止推力と機体重量の比まで存在して飛行機の性能の指針としてさかんにそのデータがサイトに掲載されている現状を見ると前回は図を書くのが面倒だったのでさらっと流してしまったがもう一度図を交えながらもう少々詳しく書いてみるか、と言う気になってきた。

まずは薄学ながらプロペラ理論の初歩の初歩を下手な図だが、それで説明したいと思う。実はプロペラやスクリューの理論はカナ〜リ難しい(特に効率に関する研究)。プロペラは実機ではジェット機が主流になっているので本流からずれてしまい大学などで学生の研究テーマとして理論が先行しているというのが現状だ。ところがスクリューは船舶では最も重要なコンポーネントでさかんに研究が行われている。ちなみにプロペラとスクリューの違いは空気と水という粘性係数のかなりかけ離れた物を対象にしているが原理は基本的には同じ(だそうだ)、ブレードの形状の違いは対象物の性格が違う事に起因する。
ちなみに確か記憶ではAPCのプロペラは当初ラジ技に輸入代理店が(当初は○K模型ではなかった)APCのプロペラは船舶のスクリューの設計理論を取り入れた独特の形状と広告にコピー文が書いてあったと思う。

プロペラが1回転で進む距離=「ピッチ」を表した図

プロペラが1回転した時に進む距離をピッチと云う値で表すが、これはビスをねじ込んで締めていくのと同じでよくタッピングビスは種類が多いので間違えて違う物を締めようとして、うまくネジ込めない時は思わず「ピッチが違うな・・・・」と思わず口から出る。
また、良くあるカン違いでピッチ=プロペラのねじり角と考えている人がいるがこれも間違い。20クラスがよく使う9×6と52クラスのファンフライが使う12×6ではねじり角は異なる。9×6と同じねじり角の12インチのダイヤのプロペラは12×8となる。最近はあまり見かけないがピッチゲージなる測定器があるが、これはプロペラのブレードの付根から70%のところ下面の角度を測る物だが引数として必ずダイヤを設定しないといけない。

飛行中のプロペラはどのような作用が働いているか表した図

上の図は各ファクターを変数ではなく項目名で表したので論文などで出てくる難解な計算式はここでは出てこないので安心してほしい。て言うか書いている本人もむずかしい事は全く解らない (  ′∇ソ ヨーワカラン ので計算式は出しようもない。(´д`; )

プロペラのブレードも主翼と同じ仕事をしていると考えてられている、作用するベクトルがプロペラの方が項目が多くなるだけだ。まずは主翼は上記の図では迎角(むかえかく)が付いた主翼を推力方向(右上を向いた斜めの矢印)に進行させると推力軸と直角方向にベルヌーイの定理により揚力が発生するのはRCを飛ばしている人なら常識のはずだ。
プロペラの場合も全く考え方は同じになるが主翼にあたるブレードは回転しながら前進しているので上記の図のようにX方向にプロペラの回転速度とY方向に飛行速度(ピッチと考えてよい)を合成した応力にブレードの持つ最大揚抗比(その翼型で剥離を起こさず最も揚力を発生する状態)の発生する迎角を加えた角度がプロペラのねじり角(ピッチ角)になるはずだが実機ではブレードの形状、エンジン出力などの複雑な要素が絡み合いなかなか計算では算出ができなくて最終的には風洞実験によって求めているのが実際のようだ。
ということで実機では可変ピッチプロペラは飛行速度によりねじれ角を変化させて常に効率の良いところを使うようにしている。ねじり角が変更できない(固定ピッチの)飛行機の場合、飛行速度を制御するには回転数を制御するしかないので実機のエンジンのように回転バンドが800〜2800rpmで着陸速度が80km位だとすると最高速度は250km位で頭打ちになってしまう。RC機は回転バンドが割合広いのでスピードコントロールの幅も広い。

静止推力測定時、ブレードの空気流を推測した図

次に飛行機を静止状態でプロペラを原動機の最大出力で回したらどうなるか・・・・これは容易に推測はできるがプロペラのねじれ角は通常、最大揚抗比の迎角をこえてしまうと考えられるので当然ブレードの上面では剥離が発生してかなりの抗力が出力軸にかかる。このような状態で推力を測定して何の意味があるのかばろの群長には理解できない。
実機のプロペラ機では可変ピッチを使っている事もあり主要目に軸出力や馬力荷重といった項目はよく見るが静止推力という項目はお目にかかったことがない。ちなみに静止推力が項目として登場するのはジェット機となる。ちなみに実機ではほとんど見かけないがダクテッドファン(ターボファンエンジンはダクテッドファンになると思われるが・・・・)は発生させる空気流の反作用により推力を得るので静止推力は測定さるべきものだと思う。まあ、ファンと呼ばれるものはパソコンのCPUに着いている冷却ファンや扇風機と同じで空気流を発生させることが主な目的だ。

ばろの群長の書いてた事だけでは理解に苦しむとか信用でけん!という人は下記のリンク先に詳細またはやさしい解説がある。

ナカシマプロペラ  http://www.nakashima.co.jp/index.html
船舶のスクリューを作っている会社ですがプロペラとスクリューの歴史がやさしく書いてあるので必見だ。

船を進める“推進器(スクリュー)”の話! http://www.city.okayama.okayama.jp/museum/propeller/index.html
上記の会社で子供用に解説しているサイト。

東京大学 http://www.u-tokyo.ac.jp/index_j.html
東京大学大学院航空宇宙工学専攻 http://www.aerospace.t.u-tokyo.ac.jp/
航空工学のメッカです。色々な研究室がありプロペラに関する研究成果もPDFで用意されているがばろの群長にはむずかしすぎる・・・・

書物としては旧潮書房(現光人社)の丸スペシャルに日本のプロペラの権威の故佐貫亦男教授の連載があった。直接関係はないが同教授の著書で「ヒコーキの心」シリーズや「飛べヒコーキ」シリーズは読み物としても楽しいのでお勧めだ。

(2005/09/25 記)