去年あたりからRC機にも津波のように電動化の大波が押しよせているがその第一波としてファンフライの分野をあっという間に被いつくしてしまった。
とかく電動機と言うとやれKV値だの電流値(安定)だの色々なサイトでデータとしてその数字のロレツがズラズラと並んでいるがエンジン機を物心付いた頃から飛ばしていてそーゆー数字には無縁だった人間にはもう (@Д@) な状態でEP機はもう逝ってくれと言う感じだったが、昨今の小型電動ファンフライの流行はそんなエンジン機屋でも手軽さ故にみんな挙って買ってきて飛行場では順番待ちの間に隅っこでクルクルとヒコーキで釣りをやるようになってきた。
なんと言ってもそのヒコーキはEPPやスチレンペーパーで出来ているのでバルサのように削ったりペーパーがけもしないのでゴミやほこりも出ない、もちろんフィルムも張らなくて良いので短時間にしかも安価に作る事ができる。メカは超小型サーボは\2,000以下、受信機も安い物は\3,000以下なので以前では考えられない位の値段で揃える事ができるようになった。
以前のエンジン機屋、特にスタント屋は今の電動機屋さんには考えられないと思うが秘密主義が蔓延していて某RC雑誌社の某選手権の機体データはかなり実際とは異なるデータが載っていることもザラにあり、中にはメカ室にカバーをしてギャラリーから見られないようになっているヒコーキもあった。そんな人種なのでデータ分析なんて技はあまり持合せがなくその分、経験とカンで乗切ってきたが、この小型電動ファンフライはパワーユニットはハイ!GWSの350D、プロペラはハイ!GWSの12×6、バッテリはハイ!2セルの1200mAと定量化されたデータがあったのでまるでエンジン機のような手軽さでみんなそれに倣って買い揃えた。もちろんエンジン機屋は元気良く飛べばKV値だの電流値などには興味がないのでクランプメータやワットメータなどの測定器は全く揃える気はない、実はタコメータを持っている人も少数派になる位なのだ。
電動化の大波は今度はあろう事か当分の間はまだ普及は無理と思われていたスタントの世界まで第二波によって被い尽くそうとしている。しかも50クラスや90クラスではなくいきなりフルサイズというところがすごい、P-03では世界選手権で7位、P-05になった初めての年にいきなりルルーがチョンボしたとは言えマット親子が1、3位と電動機を使って勝ってしまったのでハードウェアとしてはGP、EPはどちらも同等になってしまった事を意味していると思う。
では双方どんな点がイケいるのか、またはイケてないのか箇条書きにしてみた。
- YSのDZ160が発売さた現在、電動機ではそのパワーを上回る事が出来ない。
DZ160では16×13を8300rpm位で回すがマット親子が使ったHackerC50XLの13TではAPCの22×12Eと言うまるで80ccクラスのガソリンエンジン並みのプロペラを5800rpmで回す、(ラジ技05年2月号より)パワー的にはどちらが上かは判らないがDZ160はピッチ13インチのプロペラを8300rpm回しているのでスピードは出る。(速度は単純計算でフルパワー時約164km/h出る事になる)HackerC50XL13Tでは何と22インチのダイヤのプロペラを回しているので垂直上昇はDZ140よりはバリバリ、垂直降下はブレーキが利きまくり、さらには水平歩飛行はかなりトロトロと飛ぶ事が予想されるので、(ちなみに速度はフルパワーでも約106km/hしか出ない計算になる)演技がかなり小さくできると思うのでフレーム内に入れやすくなる。また近くで飛ばすことができるので最近のスタント機は機影を大きく見せる為にかなり肥満気味の胴体になっているが電動機はスッキリとスリムな形状にしても問題がないと思う。ただゆっくりしか飛ばないので水平飛行の基本練習はしっかりしておかないといけないと思う。
- 電動機は排気音が無いので静かだ。
DZ160はハッキリ言ってかなり静かなので選手権の上位に行く人は更にスロットルワークが巧みなので離陸してしまえば排気音を聞くことはあまり出来ない。それに比べて電動機はどうよと言われるとフルサイズの電動機は見た事が無いので答える事ができない。ただ今まで見た中で50クラスにギヤダウンのパワーユニット積んだ電動機はギヤの音がけっこう聞こえて来るので、明らかに静かなDZ160搭載のスタント機に負けてしまっている。50クラスに積んだギヤダウンのパワーユニットが負けてしまう位なのでHackerC50もギヤダウンタイプなので恐らく負けてしまうと思う。ただあくまでもDZ160は上手い人が使っての事なのでスロットルワークがON/OFF的な人やDZ140では逆転する場合もある。またアウターローターなどのダイレクトドライブのモーターが発売されれば同等位までには持って行けるかも知れないがなぜか電動機はプロペラから出ていると思われる高い音質の風切り音が気になってしまう。
- 電動機はリポを使うが恐ろしく高価なので燃料代として元を取る事ができない。
マット親子がヨーロッパ選で使ったバッテリがサンダーパワー社の5セル(18.5V)6000mAを2本直列にして1パックにしていがこのバッテリは1本\51,000している。(リトルべランカ扱い)つまり1パック約10マンセ〜と言う事になる。ちなみに燃料代を計算してみると自分で使っている燃料はTHCの25%ニトロだが量販店で16リットルで\12,000位だ。1フライトで550cc消費するとして約29フライトできる事になるので1フライト約\414となる。と言う事で10マンセ〜では242フライトできる事になるがこのバッテリーではたして242フライトできるかどうかは今の所判らない。( ′∇ソ ヨーワカラン
ただ電動機は見栄えよりも軽量化を重視しなければいけないので現状のパワーユニットを使う上では当初はバルサ製でフィルム仕上げのヒコーキがベターだと考えられる。またDZ160はモータよりもやや高価でマニホやマフラーなどをアサノ製で揃えるとかなり高額になってしまうしマニホが消耗品と言っている人もいる位で、さらに日本製の塗完のヒコーキを飛ばす事と比べるとトータルのコストはかなり有利になると考えられる。
- 電動機にバッテリとして使うリポは充電などでチョンボると燃えて火事になる。または火事にならなくても10マンセ〜が一瞬でお釈迦になってしまう場合があるので充電には毎回気を使うので飛ばす前に疲れてしまう。
小型機ファンフライ以外の電動機のバッテリの主流はリポではなくNiMHやニッカドの場合が多い。これはコストが比較的有利と言う事もあるがやはり発火などの危険性や充電ミスでバッテリをお釈迦にしにくいからだと思う。それではスタント機もNiHMやニッカドを使えばええじゃろ、と言われそうだがスタント機の場合はP-05などは演技時間が8分位となり10分位の飛行時間が必須になってくる。となるとNiHMやニッカドは単セル当りの容量が3000〜3300mA位までなので必然的に飛行時間は4分位になってしまう。またFAIのF3A規定でバッテリ電圧が制限されているのでセル数を増やして電圧を上げることもできないので10分と言う飛行時間は達成できない。もっとも重量もかなり重たくなってしまうので機体重量も規定の5kg以内に収める事はできなくなってしまうのでリポを使わざる得ないが逆にリポの出現によりスタント機の電動化が達成できたとも言う事ができる。
競技会や検定会では1番の心配のネタがエンジンの調子になる。会場に着くと朝一でエンジンを始動してニードルなどを見ておいて競技中は時間節約のためエンジンが始動したらすぐに離陸となる。タイムキーパーはプラグヒート開始から計測を始めるが始動に手間取ると時間が気になって演技もシドロモドロなんて事もある。その点、電動機は充電では気を使うが前記のような心配のネタはクリアされる。まあ一長一短とと言うことができるが家で充電していて火事になってしまうのも困るが飛行場に向かう車中で充電中に発火して車と共にヒコーキが燃えてしまっても困る。やはり飛行場に着いてから発火しても良い場所で充電した方が良いかも知れない。充電完了まで電動ファンフライで楽しんでいれば待ち時間も有効に使えると思う。
- 電動機はオイルが排気されないので手入れが楽だ。
当り前だがオイルが排気されないので極端な事を言えば生地完成のヒコーキでも飛ばす事ができる。クソ重たいバッテリを積んでいるので軽くする必要もあるのでフィルムで仕上げるのがベターだが、特にFAIの規定で5kg以内となっているので当初の目標は5kg以内となると思う。エンジン機のようにオイルがかからないのでフィルムの剥げ防止も必要ないかもしれないしマウントなども耐油処理の必要もなくしみ込みもないのでヒコーキの寿命が長いかも知れない。ただやはり超軽量の塗りでテカテカのヒコーキも日本人の事だから職人芸でいずれ塗上げてくるかもしれない。
- 電動機に使うモータは振動が少ないので防震対策を施す必要がない。
電動機でも22インチという今までにない大口径のプロペラを回すので振動とは無縁ではないが、今思えば4サイクルエンジンは振動との戦いに終始しているように感じる。F-120ACからフローティングマウントは必須になりマフラーも大型化してきた。DZとなると今度はノッキングという厄介な要素もさらに増してしまい冷却問題もあり扱いは難しくなってきた。今でこそネットで情報が取れるのであっという間にノウハウが全国に広がり問題はあまり表面化しないが加給器付4サイクルエンジンでしかも燃料が直墳と言うのはレーシングエンジンのようであまりにも高性能化しすぎていると思う。自分的にはFZかLimited位の機能で容量のサイズアップをしていって欲しかった。
振動によりサーボは舵面の保持能力が要求されるので今ではデジタルサーボが一般的だが振動の少ない電動機ではアナログサーボでも使えるかも知れないがマット親子はしっかりデジタルサーボを使っている。どちらにしても振動によるRCメカのトラブルはかなり少なくなる事が予想さる。
他にも電動機は細かいメリットが有るような気がする、例えば電動機はクソ重たいバッテリを積んでいるので前後に位置を調整できるようにすると重心をオモリを積む事無しに調整ができ、スタント機はアンダーカウル(ペリーパン)が取外せるようになっているので本来はマフラーが収まるけっこう広いスペースにバッテリを搭載する事ができる。また設計時にノーズモーメントを短くしてテールを長く設計してもエンジンのシリンダー部分が無いのでバッテリーをこの位置まで思いっきり前に積む事ができるので有りとなってしまい設計の自由度がかなり広がると思う。
RCカーの世界では電動のトップレベルの連中はバッテリがすべてで、勝負を左右してしまう要素となっているのでヒコーキ屋が見ると驚くほどの量を所持している、しかもマッチドやザップドという手の込んだ事が施されていてその金額は天文学的で電動F3A機で使うバッテリの金額の比ではない。ところがマット親子は1機あたり4パックしか用意しなかったのも意外だったが、電動カーは決勝ともなるとバッテリの能力ギリギリまで使うのでシビアその物だが、ヒコーキは余裕を持って使うので電動カーほどシビアさは要求されないので4パックで十分かも知れない。
今年はMKからパワーユニットセットが直販と言う形で発売され普及に勤めるという事だが、やはり取扱がエンジン機とは違い特に注意しなければいけない点も多少あるので売りっぱなしという製品ではないとの事でこのような販売形式になったとの事です。この姿勢はユーザーからすると安心感があり、さすがスタント機の老舗メーカーとして賞賛されべきことだと思う。最近は通販やネット販売が普及したためか模型屋さんが相次いで閉店しているようだが、新しい物を熱意を持って普及させようとすると必然的にユーザーは付いてくるものかも知れない。この老練メーカーのMKの熱意がビンビンに感じられるので電動機の普及は極めて短時間に進んでしまうかも知れない。
(2005/01/18 記)